またまた彼が人間の屑になった。
人間の屑とはいってもその前に「愛すべき」という言葉が付くのであるが・・・・・・。
その人物は、競馬のY師匠。
あれは日曜日のことであった。
早い時間にN沖デスクと二人でまったりとしていた時、弟子のM氏を伴って彼は現れた。
すでに酔っていてとても上機嫌、その額には当たり馬券が貼り付いている。
入ってくるなり「N沖さんもマスターも僕の伝票で一杯どうぞ」ときた。
「え、いいんですか?」というN沖デスクに「だって、俺金しかないんだもん」・・・・・・・と彼。
前もそうだった。
入ってくるなり顔なじみの女史にむかって「〇〇ちゃん、ごめんね、僕は君に何にもしてあげることができないんだ、愛もないし思いやりもない・・・・・・・だって、俺金しか持ってないんだもん」。
競馬に勝つといつも彼はこういう状態になる。
「金しか持ってない」、「金しかないんだもん」・・・・・・・・・・。
いつもはいい男なのだが、突然成金になってしまう。
その日、彼は競馬の後所用を足しに渋谷の場外馬券場から池尻大橋に行ったのだが、N沖デスクが「バスで行ったんですか?」と尋ねると「バス?バスってなんすか?・・・・・・・・ああ、あのたくさん人が乗っている大きな自動車ですね、僕はいっぺんも乗ったことがありません、もちろんタクシーですよ、いつでもタクシー」・・・・・・・・と最後までこんな調子である。
彼も飲食接客の仕事を長くしているのだが、この時ばかりは本人曰く「僕だったらそんな不遜な客は追い出します」というお客になってしまう。
それにしても秋の初G1「スプリンターズステークス」を馬単、馬連、ワイドをそれぞれ一点勝負で射止めた彼は凄い・・・・・・・・。
始まったばかりの秋競馬。
二週に一回くらいは人間の屑になってもらいたい・・・・・・・・これは僕たちのみならず彼本人の願いでもある・・・・・・・・・。