常連さんたちが来店するなり唐突に僕にこう言う。
「俺二分半」、「僕は五分」、「えーと君は何分にする?」。
事情を知らないお客さんたちはなんのことだと戸惑うが、実はこれ、愛妻家のS氏とその同僚のまたまたS氏が考え出したお遊びである。
発端は、何か手軽なおつまみはないかと考えていた時にN女史が「ゆで卵が食べたい」と言ったことに始まる。
初めはあらかじめ開店時に数個茹でていたのだが、まったく売れない日もあったため、注文をもらってから茹でるようにしたのである。
「マスター、ゆで卵一個」、「茹で時間何分がいい?」、「じゃ三分」と言う具合に注文を受けてから一個ずつ茹でる。
一個百円で提供させていただいているので原価率は高いが、効率も儲けもはなはだしくよろしくない。しかしゆで卵はとても奥が深いので楽しんでやらせてもらっている。
一個なら楽勝なのだが、まとめて五個六個と注文がくるとパニックになる。それぞれの注文どおりのゆで時間の卵を一個の鍋で作るのだから老化防止にはいいかもしれないがかなりしんどい。
これを面白がって冒頭のような光景が繰り広げられることになるのだが、これを機に自由が丘鶏卵会発足の運びと相成ったのである。
ということは・・・・・会長はN女史、専務理事が愛妻家のS氏、常任理事がご同僚のS氏ということにでもなるのか・・・・・・・。
この会の活動によりゆで卵の奥深さがどんどん追求され、行く行くは茹で時間や冷ます方法の違いなどによって、それを食べることにより花粉症が治ったり、鬱病や神経症が癒されたり、視力が回復したり、不老長寿になったり・・・・・・こんなことを考えているとおかしくなりそうだが・・・・・・そんな日がいつかやってくるかもしれない。
冗談のような冗談な話であるが、この会が今後も成長発展を遂げられることを切に祈る次第である・・・・・・。