あれは大晦日の夜であった。
皆と話をしていたとき、S女史がふとある翻訳家の名前を口にした。
その翻訳家の訳本は何冊か読んだことがあるのだが、その時僕はどきっとした。
実は、前日自由が丘の本屋さんでその訳者の翻訳本が目に留まり、買おうか買うまいか悩んでいたのであった。
普通なら本棚にきちんと本が並んでいるのだが、その本は本棚からはみ出て横たわっており、さも僕に手にとって見てみてくださいと言っている様であった。
結局、その時は買わなかったのだが、大晦日のS女史のことが頭から離れず、今日本屋さんに行ってみた。
そしてその本屋さんにはお目当ての本はもうなかった。
縁がなかったのかなと思い外へでたところ、もう一軒だけ覗いてみては?というアイデアが沸き、相当マニアックな本だからまさかと思いながらもう一軒の本屋さんに行ってみた。
本のありそうなコーナーへ行ってみると、真っ先に見に飛び込んできたのがその本であった。
やっぱり縁があったのか・・・・・・・・、そんなにあちこちにある本でもないのに・・・・・・。